ドムスデザインの戸倉です。
賃貸マンションの市場も2020年を境にますます厳しい時代を迎えると
いわれています。

ではそれを踏まえて賃貸マンションの計画で出来ることは何でしょう。
魅力が無いマンションは家賃を下げなければならなくなり
収支計画も狂ってきます。
10年後も20年後も愛されるマンションであるためには入居者に選ばれる
マンションでなければなりません。

さて、私はイタリアで暮らした際に感じた集合住宅の豊かさがあります。
それはゴージャスという 建物とは違い・・・質素ですがあきらかに
日本のマンションとは違っていました。

それは何なんだろうと考えてみると
日本だと無駄とされるようなものがたくさんあったのだと思います。
中庭・路地・階段ホール・渡り廊下・・
階段を2段あがって専用住居に入ったり、一度中に入ってから再び外にでたり
中庭を空中回廊で歩いて部屋に入ったり
建物の構成がワクワクするものが多くひとつとして同じものが無いのです。

建物の周囲には必ず緑の居場所があり、鳥がやって来て朝その鳥の声で
目覚めます。
朝と夜とで建物は表情を変え、夏の夕方は陽が長く、中庭に面した
キッチンのバルコニーで何か鍋をかけながらワインを頂く。
 お料理する時間もゆったりと過ぎていきます。
中庭を通して お隣さんの気配も感じながら
ゆるやかなコミュニケーションが楽しくもありました。

日本の集合住宅でそんな楽しい毎日を造れないものか・・。
私は15年ほど前に世田谷区の賃貸マンション
La Bella Vitaのデザインに携わりました。

その際に絶対これは造らなくては!と思ったのが中庭でした。
中庭には効果があります。
まず光を建物の内側まで入れてくれます。
南に面してだけ窓が並び北側は寒いという羊羹型のマンションは
容積率や建蔽率は効率的に取れますが光が内側に入る場所がありません。
日本の場合効率が優先されるから無駄のないマンションが出来上がります。
しかしイタリアのマンションはそれよりもいかに生活が楽しくなるかという
ライフスタイル重視であるといえます。
そして無駄な部分が出来るわけですがそれが逆に楽しさをつくってくれるのです。

La Bella Vitaの中庭には樹齢100年のヒメシャラを真ん中に植えました。
ヒメシャラは木肌が美しい落葉樹です。
夏には葉を茂らせて木陰をつくり、冬には葉を落として太陽を入れます。
そして雨の日の幹の色は艶っぽく妖艶な雰囲気をかもし出します。
こんなに日によって表情を変える樹木があるでしょうか。
中庭に大きなシンボルツリーを入れる。
それは建物の魂をすえるようなものです。

そして水音。
耳に心地よい自然の音を中庭に入れました。
実はBGMを考えてスピーカーも中庭に面した4箇所に据え付けておいたのですが
スピーカーから流れる音より中庭にこだまする水音が心地よくBGMは止めてしまいました。

この水音の正体はイタリア FIRENZEで造ってもらった噴水です。
いるかの口から水道の蛇口から出るくらいの量が流れるのですが
高さ1.3メートルくらいから落ちる音が丁度良い感じです。

ヒメシャラ・噴水・そして回廊を構成するアーチ・石畳
一つ一つが住人の五感に訴えるものにすることが大事です。

住人は必ず中庭を通り、回廊から自分の家にたどり着きます。
しかし大切なことは回廊からすぐにドアで無いことです。
アルコーヴという自分の玄関前にもうひとつの空間があります。
アイアンの低い門扉があり、それで外とアルコーヴ空間を分けています。
わずか2㎡程度のアルコーヴですがこれがあるとそこからプライベート空間
ですよという演出ができます。
このように直線上に集合住宅の玄関が並んでいくより
お隣さんの玄関が直接見えないこと、玄関ドアを開けた時に家の中まで
丸見えにならない事は大切なことです。
これも無駄に見える空間構成から生まれるプライベート感ある
入口の造り方です。

そしてもうひとつ大切なこと。
このLa Bella Vitaは中庭に面しても外観上に
雨どいやエアコンのドレインなど余計な配管が出ていないことです。
それは建物を計画する際に縦管を通すPSの中に雨どいやエアコンの
ドレインなど余分なものを隠したのです。
そうすることで中庭の景色に縦管の余計なもの、邪魔なものが出てこないので
美しい壁面が実現できました。

効率的に造ろうとすると私が書いているような事はタブーです。
でも効率を重視するばかりにつまらない(トキメキの無い)マンションを
造ると2020年後の空室時代に勝てないマンションになります。

効率も大事ですがそれだけで進むことなく設計ができても
それだけで進むことなく、図面の上を歩くように住まい手の気持ちになって
考えてみましょう。

中庭は効果的です。
中庭がつくれるマンションならぜひ挑戦なさってみてください。
そこに緑・水音・ホッとする照明などがあれば住まい手が喜ぶマンションが
出来るはずです。
オーナーさんの心はそんなところにも表れるものです。
今日は満室マンションの造り方をお届けしました。

 

 

ヴェローナ
ジュリエットの家

この家にも中庭があります。

 

 

 

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株式会社ドムスデザイン一級建築士事務所